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函館セミナー速報

 2016年10月29日(土)14:00から、函館病院 臨床研究棟 視聴覚情報室において、「北海道新幹線開業記念~臨床検査技師の現在・過去・未来~」をテーマにした函館セミナーを開催しました。
 初の試みとなる函館での研修会には会員、講師、メーカーの合わせて40名の参加がありました。

講演1

講演1 東 義則 先生 
 講演1は株式会社シノテスト R&Dセンター遺伝子・免疫ユニットチームリーダーの東 義則先生を講師にお迎えし、「梅毒血清検査の歴史とアキュラスオート TP抗体(梅毒)-Aのご紹介」と題して行われました。
 梅毒の起源には諸説あるそうですが、かつてはカリブ地方の風土病であり、コロンブスが新大陸発見の際にスペインに持ち帰り、ここから全世界へ広がったと言われているそうです。 梅毒という名前は、第2期に見られる赤い丘疹が楊梅(ヤマモモの中国名)の実に似ていることに由来しているとのことでした。 日本で梅毒は戦国時代の動乱に乗じ全国へ広まり、豊臣家や徳川家仕えた武将も感染していたそうです。その後、1905年に梅毒の原因菌としてトレポネーマ・パリダム(TP)が同定され、 1913年に野口英世により脳梅毒が発見され、1943年にペニシリンによる治療法が確立されたとのことでした。
 近年梅毒の感染者は増えており、注意喚起されているものの2015年には2010年の5倍と激増し、流行はまだまだ懸念されているようです。 また最後にアキュラスオート TP抗体(梅毒)-Aの紹介をして頂きました。この試薬の特徴はTP遺伝子を取り出し、増殖した後に精製したリコンビナント抗原を使用している点であり偽陽性率が低く、再現性が高いとのことでした。 お客さんからの意見を参考に、いつでも正しく測定できる試薬、使い勝手の良い試薬をコンセプトに開発されたそうです。
 梅毒と世界および日本の歴史との関わりが大変興味深く、試薬の測定原理もわかりやすいご講演でした。ありがとうございました。


特別講演1

特別講演1 谷内 純一 先生
 特別講演1は、元北海道がんセンター 臨床検査技師長 谷内 純一先生をお迎えして「検査技師の歴史 ~国臨協を中心に~」と題して行われました。
 検査技師の歴史は終戦を迎える頃にまで遡り、昭和20年、東京に国立病院・療養所が誕生した際に陸軍病院と海軍病院の試験室を統一して検査室がスタートしたそうです。 そして昭和26年、現在の国臨協(国立病院臨床検査技師協会)の前身である病理・細菌連絡協議会が発足したそうです。この頃実際に技術者が行っていたのは細菌、血清検査が中心で、昭和33年に衛生検査技師法が公布されて以降、 心電図、脳波、肺機能等の生理検査機器が普及し、検査試薬のキット化と検査機器の開発が大幅に進歩していったそうです。その後、技師法の改正運動を経て昭和45年に臨床検査技師法が公布されたとのことでした。 また、現在多くの検査技師が所属している日本臨床衛生検査技師会を立ち上げる際も、国立病院の技術者が中心となったそうで、国臨協が私たち検査技師の歴史に密接に関わっていることがわかり、感慨深く感じました。
 歴史の他にも国立病院の独立行政法人化への経過や政策医療について、そしてこれからの未来に向けて国立病院検査科がどうあるべきかお話し頂きました。 社会の変化に対応していける検査科、検査技師を目指していくことが大切で、そのためにはなんといってもコミュニケーション力が欠かせないとのことでした。 医療界で検査技師の能力、専門性をもっと発揮するために検査科室内はもちろんのこと、他部署との繋がりが大事だと痛感しました。 検査技師の過去を振り返り、未来を切り開くような貴重なお話をありがとうございました。


特別講演2

特別講演2 奥田 勲 先生
 特別講演2は、元国立病院機構本部 臨床検査専門職 奥田 勲先生をお迎えして「臨床検査と臨床検査技師の将来展望 ~ISO15189との関連を踏まえて~」と題して行われました。
 加速する医療改革の中で、日本の臨床検査はどういった方向へ進むのか、臨床検査技師の役割はどう変わっていくのか、熱くお話しして頂きました。 今後日本の医療は、地域包括ケア医療体制という地域と連携、協同しながら進めていくようになるそうですが、その流れに乗れるように私たち検査技師も多能性を備え、 需要のあるところへシフトして仕事をしていく必要があるとのことでした。 専門性を高めていくことももちろん重要ですが、携われる仕事の幅を広げることで医療への貢献度が大きくなり、そこから新たなチャンスが生まれるとのことでした。 そのためには、採血業務、法改正で可能となった検体採取業務、さらに患者さんへの検査結果の説明に取り組み、医師や看護師さんなど周囲のスタッフから、この仕事を臨床検査技師に 任せて良かったねと言って頂けるように頑張っていく必要があるとのことでした。
 近い将来、病棟で検査の事前準備から結果の説明まで患者さんの検査全般を担う病棟検査技師や、在宅医療で心電図検査や簡易血糖測定を行う訪問検査技師のような、 検査室の外で活躍する仕事が普及していくかもしれません。最後には働く場がどこであっても欠くべからざる「臨床検査技師」という職種になって欲しい、国臨協だからこそできる役割があると激励のお言葉を頂きました。 ありがとうございました。


フロア風景



 以上、セミナー当日の様子をダイジェスト版としてお伝えしました。参加された皆様、お疲れさまでした。 また、今回のセミナー開催にあたり、三嶋技師長をはじめとする函館病院の方々には大変なご尽力を頂き、ありがとうございました。 この場を借りて、改めて御礼申し上げます。次回はウィンターセミナーでお会いしましょう。



函館セミナー

開催日時


テーマ: 「北海道新幹線開業記念~臨床検査技師の現在・過去・未来~」
日時 : 2016年10月29日(土) 14:00~
場所 : 函館病院 臨床研究棟 視聴覚情報室
参加費: 1000円
受付 : 13:30~


プログラム


総合司会 国臨協北海道支部 事務局長  灘 雅雄  

開会の辞
 14:00~14:05
国臨協北海道支部 支部長  志保 裕行 
講演1
 14:05~15:05
司会 佐藤 路生 (国臨協北海道支部 副支部長) 

 「梅毒血清検査の歴史とアキュラスオート TP抗体(梅毒)-Aのご紹介」
株式会社 シノテスト                           
R&Dセンター遺伝子・免疫ユニットチームリーダー 東 義則 先生  
休憩
 15:05~15:15

特別講演1
 15:15~16:15
司会 志保 裕行(国臨協北海道支部 支部長) 

 「検査技師の歴史 ~国臨協を中心に~」
元北海道がんセンター 臨床検査技師長 谷内 純一 先生 
休憩
 16:15~16:25

特別講演2
 16:25~17:25
司会 濱 敏則(国臨協東北支部 支部長) 

 「臨床検査と臨床検査技師の将来展望 ~ISO15189との関連を踏まえて~」
元国立病院機構本部 臨床検査専門職 奥田 勲 先生 
閉会の辞
 17:25~17:30
国臨協東北支部 支部長 濱 敏則 
国臨協北海道支部 事務局
〒063-0005 札幌市西区山の手5条7丁目1-1
独立行政法人 国立病院機構 北海道医療センター 臨床検査科内
TEL 011-611-8111  FAX 011-611-5820
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