支部勉強会・研修会他

研修会の報告

 国臨協北海道支部主催の研修会が2019年05月25日(土)13:30より北海道医療センター5F大会議室で行われました。 講演2題と参加者全員によるケーススタディを行いました。

講演1

講演1 栢間先生
  講演1は国立病院機構本部 情報システム統括部 データベース企画課 システム専門職整職の栢間 貴宏先生による、『国立病院機構における診療情報集積基盤とデータ利活用について』と題した講演でした。
 電子カルテの普及率はNHOで現在78%と民間病院に比較して高く、今年度末までには90%に達する見込みであるが、電子カルテは医療機関の規模により様々なメーカー・種類が導入されているため、データ互換性の問題等から統合的に分析することは困難であったそうです。 しかしながら、「厚生労働省電子的診療情報交換推進事業」において策定された医療情報の交換・共有のための規約(SS-MIX)を用いて各医療機関に蓄積された医療情報を効率的に分析・可視化することが出来るようになり、 標準的な形式で蓄積された患者基本情報や処方歴、検査結果歴等のデータは、報告書作成、災害時のバックアップ、各種研究への活用など様々な利用が可能になったとのことでした。 また、日本臨床検査医学会が制定した臨床検査コードであるJLAC10の対応率は23%と低く、国立病院機構診療情報集積基盤(NCDA)が牽引している状況であるとお話しされました。
  日本の診療情報を取り巻く状況については、健康医療介護分野でのICT活用を進めるために様々な施策が進められており、医療保険や介護保険の情報を連結解析した地域包括ケアシステムの構築、効果的・効率的な医療介護提供体制の整備等が掲げられているとのことでした。 具体的な連結解析例として、ある自治体において脳梗塞のために急性期病院で治療を受けた患者の70%以上が6か月後には介護サービスを受けており、介護老人保健施設とディサービスの利用が増加しているといった情報が得られたそうです。 また、民間事業者が膨大な医療情報を実名で集め、企業や研究機関に匿名化して提供できる次世代医療基盤法が閣議決定され、治療効果や評価等に関する大規模な研究の実現、異なる医療機関や領域を統合した治療成績の評価など世界最大の診療データベース化が進められているとお話しされました。
  栢間先生が大きく関わった作業として、JLAC10コードについて歴史から構成、マッピング、コーディングルールなどをお話しされました。構成は分析物、識別、材料、測定法、結果識別の5要素を含めた17桁からなるが、全ての材料や測定法にコードが存在する訳ではないため複雑な作業が求められたそうです。 同一の検査項目に多彩なコーディングが可能であるため作業者によってずれが生じないように細則に逸脱しない範囲でルール作りが必要であったとのことでした。 最後にNCDAを通して感じたこととして、転勤制度を考慮したマスタづくりや医療ビックデータを考慮したデータ蓄積などは技師長を中心とした検査科全体でのフォローが必要であるとお話しされました。栢間先生ありがとうございました。


講演2

講演2 藤田先生
 講演2は、北海道がんセンター 感染症内科医長 藤田 崇宏先生による『感染症診療-検査室に望むこと』と題した講演でした。
 現在の抗菌薬適正使用、薬剤耐性菌の世界的な問題に対する検査室の役割、細菌検査に携わっていない技師であっても検査室全体として出来ることを感染症内科医の立場からお話ししていただきました。
 血液培養については敗血症の症例を用いて、経験的治療、血液培養陽性後、薬剤感受性検査後の各々の不適切治療で死亡リスクが3倍になってしまうため血液培養が重要であるとのことでした。 週末に血液培養を採取すると血培陽性報告までの時間が長くなり、また夜間に血液培養が陽性になると死亡率が高くなる等、検査開始までの時間と報告までの時間が早ければ早いほうが良い治療に繋がるため、 施設によって運用方法に違いはあるが検査科は血液培養と仲良くなって友達を迎え入れるような気持ちで携わってほしいとのことでした。
 抗菌薬の適正使用では、抗菌薬は使用すればするほど耐性菌が生まれてくるが治療には必要不可欠であり、感受性結果から適切な使用が重要となるとのことでした。 抗菌薬適正使用は検査科よりも薬剤部が中心のように思いがちだが、アンチバイオグラムを作成し耐性率の管理をすることは検査科の重要な役割であるとお話しされました。藤田先生ありがとうございました。


ケーススタディ

 ケーススタディは『データを考える2019』と題し、石田副支部長の司会のもと藤田崇宏先生をアドバイザーに迎え、血液培養と各施設の検出菌状況を中心に行われました。 日常、細菌検査に携わっていない技師にも分かりやすく進められ、血液培養を2セット採取する理由から各血液ボトル陽性時の推定菌までディスカッション形式で説明されました。 また採取法、感染症学会のガイドライン、厚生労働省院内感染対策サーベイランス(JANIS)についてもお話しされました。更に、施設別の全検出菌状況と材料別の検出状況が提示され、 患者背景や地域差を含めたディスカッションを行いました。


   
ケーススタディ風景



国臨協北海道支部 事務局
〒063-0005 札幌市西区山の手5条7丁目1-1
独立行政法人 国立病院機構 北海道医療センター 臨床検査科内
TEL 011-611-8111  FAX 011-611-5820
ページのトップへ戻る