研修会の報告
国臨協北海道支部主催の研修会が2017年05月13日(土) 13:30より北海道がんセンター5F会議室で行われました。 気温がなかなか上がらず肌寒さを感じる中、道内各施設から41名の会員の皆様の出席があり、講演2題と参加者全員によるケーススタディを行いました。
講演1
講演1 小畑先生
講演1は北海道大学の小畑慶子先生による、『がん領域の遺伝カウンセリング』と題した講演で、認定遺伝カウンセラーとしてもご活躍されている先生にお話しして頂きました。認定遺伝カウンセラーとは、遺伝子疾患を持つ患者さんに対して検査データの説明をしたり、診療や治療を受ける上でのカウンセリングを行うことなどを仕事としており、 日本では205名のカウンセラーの方がいらっしゃるそうです。遺伝子の変化によって起こるがんは、約90%が後天的な遺伝子変異の積み重ねにより発症し、遺伝性腫瘍によるものはわずか5~10%であるとのことでした。 遺伝性腫瘍の方は生まれつき変異がある状態からのスタートになるので、一般の方よりもがん発症までのステップが短いとのことでした。
遺伝子の変異があるかどうか調べるには、採血検査のみで結果がわかるそうですが、保険適応外なため数十万円もの自費負担になるとのことでした。 検査を受け変異があった方には早期にわかってすっきりした、ショックだったという意見、変異がなかった方には安心した、不安が減った、変異がないのに何故がんになったのか不安といった意見があったそうです。
遺伝子検査をすることにより、リスクを知って早期発見、治療に努めることができ、がんの二次予防、死亡率の減少に繋げていくことができる一方、 変異が見つかった方への遺伝子差別も危惧されるので、まだ法的に整備されていない日本にとって重要な課題となるとのことでした。 遺伝子検査は私たち臨床検査技師も今後関わる機会が増えていくかもしれないとのことで、理解を深める良い機会となりました。小畑先生ありがとうございました。
講演2
講演2 光岡氏
講演2は、栄研化学の光岡聰氏による『院内感染の原因菌と検査室の役割』と題した講演でした。
まず感染症とは細菌、ウイルス、原虫などの微生物が体内へ侵入して、咳や発熱、下痢といった症状がでることですが、検査室にはこれらの原因菌の治療に有効な抗菌薬の情報提供が求められるとのことでした。
しかし、薬剤耐性菌といって従来は有効だった抗菌薬が効きにくくなった菌があり、患者さんの治療の妨げや院内感染といった問題を引き起こしているとのことでした。近年、新規抗菌薬の開発・発売は著しく停滞しており、耐性菌がなるべく発生しないような抗菌薬の適正使用が求められるそうです。 抗菌薬がきちんと使用されることによって、耐性菌検出率の低下や平均入院期間の短縮が可能になり、医療費節減へしっかりと繋げていくことができるとのことでした。
また院内感染がどこで、どれくらい、どのように発生しているか調査を行うサーベイランスをすることで、日常的感染率の確認ができ、予防策・介入の評価や対策、アウトブレイクの早期発見ができるようになるとのことでした。 このように院内感染対策に関する検査室の果たす役割と影響は大きいということがわかりました。光岡先生ありがとうございました。
ケーススタディ
ケーススタディは『データを読むⅢ』と題し、国臨協北海道支部学術理事の村中 美幸氏が心電図、若月 香織氏が生化学、血液の事例提示と解説をそれぞれ担当しました。 例年通り、参加者を4つのグループに分け、配布した事例についてグループごとに検討を行う形式で行われました。 今回も北海道がんセンターと医療センターに臨地実習に来ている学生さんも交えての大人数での討論会になりました。閉会時間が迫った中でのケーススタディとなりましたので、 十分な検討時間がなく慌ただしくなってしまいましたが、どのグループも熱心に取り組まれていました。 講師を務められた先生、参加された会員の皆様お疲れ様でした。
なお、今回提示した事例と解説については以下のリンクからご覧になることができます。 当日参加できなかった会員の皆様もぜひチャレンジしてみてください。
ケーススタディ風景
研修会開催のお知らせ
開催日時
テーマ: 「データを考えるⅢ」
日時 : 2017年5月13日(土) 13:30~17:00
場所 : 北海道がんセンター 5F 第2会議室
参加費: 1000円
受付 : 13:00 から
プログラム
総合司会 国臨協北海道支部 事務局長 灘 雅雄
開会の辞
13:30~13:35
国臨協北海道支部 支部長 志保 裕行
講演1
13:35~14:35
司会 佐藤 路生 (国臨協北海道支部 副支部長)
「がん領域の遺伝カウンセリング」
北海道大学 保健科学研究院 病態解析学分野 小畑 慶子 先生
休憩
14:35~14:45
講演2
14:45~15:45
司会 早乙女 和幸(国臨協北海道支部 副支部長)
「院内感染の原因菌と検査室の役割」
栄研化学 マーケティング3部1課 光岡 聰氏
休憩
15:45~15:55
ケーススタディー
15:55~16:55
「データを読むⅢ」
司会 村中 美幸(国臨協北海道支部 学術理事)
若月 香織(国臨協北海道支部 学術理事)
若月 香織(国臨協北海道支部 学術理事)
閉会の辞
16:55~17:00
国臨協北海道支部 副支部長 早乙女 和幸